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舌根:印字頭’Z

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舌根

「舌が上手く切れぬのだ。」
 喋った。
 田に忘れた鉄鍬を取りに行った帰りの夜道、畦に立てられた電柱の、石英灯の光の真下。襤褸切れを纏った男が口を開いたようだった。顔は暗くて見えず、張り出した頬骨に尖った鼻の頭だけが見て取れる。もう冬至を越えたというのに肌は黒く、所々に染みや黒子が残る。皺は無いがそれなりの歳を経ているのだろうと思うが、聴いた声だけはやけに若く瑞々しい。浮浪者だろうか、あからさまに怪しいが、声をかけられて応えぬ道理も無い。
「私に、話しかけられたのでしょうか。」
「何誰でも良かったのだ。誰かに会えば聞く事だ。」
 流暢な言葉に方言は混じらず、この土地の者で無いと知れる。言葉の内容こそよく分からなかったがそれは坊主の話を聞く時と良く似ていた。私の知らぬ事を知る者と話す時、今と似た心持ちになる。
 何の話でしょう、と尋ねようとすると、風向きが変わり男の匂いがこちらへと流れてくる。煙草と泥の混ざったような、腐りかけの葉のような嗅いだ事の無い異臭に鼻を塞ぎかけ、しかし失礼だろうと手を止めた。
「舌が上手く切れぬのだ。どれ、鋏等は持っておらぬか。小刀でも良い。何か、口の中に入る刃物を持ってはおらぬか」
 比喩や暗喩の類、それとも謎掛けだろうか、しかしとんと見当がつかず私は愚直に言葉を返した。
「私の手にあるは鍬しかございません。これが口に入りますでしょうか。」
「流石に鍬は入らぬ。なら、何か術をしらぬだろうか。舌を上手く切る術だ。」
 はて、真逆この男は本当に舌を切るつもりだろうか。冗談に笑いもせず、一声毎に険しくすらなっているように聴こえる。
「ならば、口を噤めばいいのではありませんか。」
「口を閉じては刃が入らぬ。」
「口の中には歯があります。こう、三寸ほど舌を突き出し、口を閉じれば切れるでしょう。」
 言うと男は何やら頭を左右に振り、あるいは顎を突き出し、更に指を口の中へ入れる。そのような仕草を幾つも繰り返した後、またあの声を出した。
「手を貸してはくれぬだろうか。舌が上手く口から出てこん。」
「はぁ」
 そんな義理は無いというのに、不思議と手は伸びていた。からかわれているのかも知れぬし、化かされているのかも知れぬ。あるいは、化かされるなら最後まで化かされようと、そんなことを思ったのかも知れぬ。
「ほれ、口は開いておる。摘んで、引っ張っておくれ。」
 生暖かな口へ手を差し入れた。湿気の混じった息が指先を撫で、指の甲には歯が当たる。ずぶりずぶりと奥まで入り、そこで舌の先を見つける。人差し指と親指で摘めば、滑らずに纏わりつくような唾液に耐え、痛みの無いよう緩やかに引きずり出した。四寸はあるだろうか。石英灯の青白い光に晒され、やけに赤く歪だ。
「これでよろしいでしょうか。」
 声は出せぬ様子で、頷くような仕草にあわせ、男は口を閉じた。
 切り離された舌が私の指を基点に振り子のようになる。何故か血は出ず、かわりにほう、ほう、ほう、と男が啼く。
「やぁ、ようやく切れた。ありがとう。ありがとう。」
 俯き、こちらの横を歩いて通り過ぎた。驚きのあまり言葉も出ず、振り返ったが襤褸布の切れ端も見えぬ。もしやこれは化かされたのかと、舌を摘んでいた左手を見やった。
 何か得体の知れぬ生き物の切れ端でも口の中に仕込み、それを私に掴ませたのかと、そう思ったのだが、そこにはもう舌がない。粘液も血もなく、これまでが嘘だったかのように消えている。
 そういえば、男が消えた方向には街があるのかと、唐突に気付いた。
 舌がなければ上手く喋れぬ。ならば切れたのは二枚目のそれだろう、そう考えて帰路に着いた。
































あー無理だよコンチクショウ。
という訳で黒い物体です。なんかふと唐突に思いついたのでショートショート。
イメージは昔の小説って感じだったんですが、そんな語彙もってねぇー!! という訳でえらく簡易な言葉で書かれています。
……ていうか、面白いのかこれは。
感想か何かあったらコメントにお願いしますー






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